フルミストが足りない? ワクチンの供給について思うこと

今年は、インフルエンザの流行が少し早かったため、インフルエンザの予防接種も10月1日から始まりました。当院では、従来の注射によるワクチンに加え、鼻に噴霧するタイプの「フルミスト」も取り扱っています。ところが、フルミストの供給について少し困ったことになりました。正直、少し納得できない気持ちになっています。

卸業者さんの何気ない一言から

10月8日、いつもお世話になっている卸業者さんが、ふと、クリニックに来られて、話をしていたときのことです。

「先生、今年はフルミストを希望されている方は、どのくらいおられますか? 入荷は問題なさそうですか?」

私は、「第一三共さんからは十分な供給があると聞いているので、特に制限せずに予約を受け付けていますよ」と答えました。

ところが、卸業者さんのお話では、どうも供給が不安定になっている可能性があるとのことでした。その方も正式な通知を持ってきたわけではなく、ご自身で気になって医療機関に確認してくださったようでした。

そこで改めて調べてみると、ほかの医療機関のホームページには「フルミストの予約受付を終了しました」「次回入荷は未定です」といったお知らせがいくつも出ていました。なので、少し心配になり、各方面に連絡をしました。

すると、フルミストは、現在、まったくないに等しい状況のようなのです。

今年は十分に供給されると思っていたのに…

フルミストが日本で発売されたのは2024年です。当初はまだ馴染みが薄く私も採用しませんでした。

昨シーズン(2025年)は、供給量が限られているという話を聞いていたため、多くの医療機関は、慎重に発注していたと思います。私も、当院に割り当てられた数(たとえば、20本とか)だけで止めました。注文しても入荷されなかった、ということです。

「フルミストの上限は、各医療機関で決まってる」のです。

そのため、2025年は、フルミストの予約制限をしました。「注射とフルミストを変更してもいいですか」という質問にも満足に回答できないこともあったかもしれません。「インフルエンザにかかってしまったので、フルミストを予約していましたがやめます」といったケースも出てきます。

数が読めませんでした。なので、2025年の12月頃は、「フルミスト、まだありますか」という問い合わせの連絡がありましたが、「今シーズンは終わりました」と回答していました。制限をかけざるを得なかったのです。

一方、今年は違いました。

インフルエンザの予防接種シーズンのはるか前(2026年春・夏頃)から、メーカーや卸業者さんから、「今シーズンは、フルミストの採用を積極的に勧めてほしい」と、案内がありました。

「供給についても十分に準備しています」と説明を受けていました。なので、2026年は、予約に制限をせず、希望される方に接種できる仕組みにしました。

ところが。

実際には、追加のフルミストを確保できない状況になっています。今年は予想以上にフルミストを希望する方が多かったのかもしれません。ただ、それならば供給が不安定になりそうな段階で、医療機関にも情報を伝えてほしかったのに、と思ってしまいます。

少なくとも、私が今回の状況を知ったのは、メーカーからの正式な案内ではなく、卸業者さんとの何気ない会話がきっかけでした。

予約した方に説明するのが、申し訳なくて。

今回、当院でも一部の方に接種日の変更をお願いさせていただきました。

今年、フルミストは3回に分けて入荷されます。

たとえば、9月末の初回の分は、10月1日接種開始時からフルミストを接種開始しはじめると、当然、当院の在庫が減っていきます。

10月5日ごろにはフルミストが足りなくなってきたの、発注しようとしたら、「どこにもフルミストがありません。10月8日の第2回のフルミスト出荷分までお待ちください」との状況でした。

なので、10月7日に希望されていた方には、10月8日の第2回のフルミスト入荷のタイミングに合わせて、予約の変更をお願いさせていただくことになりました。

その第1回だけの問題かと思いきや、第2回のフルミストも、希望している方みんなに届かない状況である、と判明しました。10月9日現在、10月中旬にはフルミストの当院ストック分がなくなります。

第3回のフルミスト入荷は、10月末の予定です。

フルミストは、何本入荷されるのか、分かりません。私は、欲しい分だけ届くものと思っていました。でもそうではなく、第1回の入荷、第2回の入荷、と、各1回だけで終わりだったのです。

せっかく、「フルミストにしよう」と決めてくれた方に「ワクチンが確保できなくなりました。」とか、「予約の変更をお願いしたくて連絡させていただきました」とお伝えしなければならず、申し訳ありません。

なお、日頃からお世話になっている卸業者さんには、今回もできる限りの対応をしていただいていると思っています。決して、卸業者さんを責めたいわけではありません。

ワクチンは、希望する人に届いてほしい

今回、気になるのは、「ワクチンの供給状況について、できるだけ早く、メーカーから連絡がほしかった」という点です。

フルミストは、どこに消えてしまったのでしょうか。もともとなかったのでしょうか。

「早く大量に発注した医療機関には届いている。そうでない医療機関には少ししか届かない」といったことが起こっていないか不安です。

供給は十分、と聞いていたのに。

ワクチンの供給が突然制限されてしまうと、医療機関は困ってしまいます。

ワクチンを国内で開発・製造してくれると、もっと安定して供給されるのでしょうか。フルミストは、海外から輸入しているはずなので。やはり、ワクチンを自国で開発するということは、とても大切ですね。

供給が難しくなっているなら、せめて早めに教えてほしかった

今回、フルミストが不足している背景について詳しい事情はまだ分かりません。メーカーにも、予想を超える需要や生産・輸送上の制約など、さまざまな事情があるのかもしれません。

ただ、メーカー側は、医療機関に対して「ぜひ、今年は、積極的にフルミストを勧めてほしい」とプロモーションしてこられました。そのつもりでこちら側は動いていました。

なので、供給が難しくなったのであれば、「できるだけ早く状況を知らせてほしかった」と思っています。

もっと早く状況が分かっていたら、予約を調整することもできたし、保護者の方への説明や予約の変更なども防げることができたから。

希望される方に、予約日を気にせず、いつでも接種してもらえるようになってほしい。そして、そのために必要な情報が、メーカーからクリニックにきちんと届いてほしい。今回、そんなことを強く感じました。

このままだと、フルミストは「早いもの勝ち」のワクチン、になってしまいます。