災害が起きたとき。クリニックは診療を続けられるのか――熊取町の医療機関でBCPを話し合いました

先日の夕方、医師会の会議がありました。熊取町にある開業医の先生方が集まる、とのことで、私も、その会議に参加してきました。
今回のテーマは「BCP」です。BCPとはなにか。これは、Business Continuity Plan(事業継続計画)の略のようです。要するに、「地震や台風などの災害が起こったときに、仕事をどう続けるのか」、あるいは、「一度止まった仕事をどう復旧させるのか」を、平時から考えておこう、というものです。
今、サイバーセキュリティが問題になっていますよね。「アカウント流出が起こってからでは遅いので、その対策をしよう」、ということですね。
熊取町の先生方が15人ほど集まりました。当初は30分程度の会議の予定でしたが、議論がかなり白熱して、1時間ほど話し合っていました。
2018年の台風を経験した先生方の話
私は、ほとんど、先輩方の話を聞いていました。その中で、先輩の先生方が困ったのは、2018年9月の台風だったようです。
当時、私はまだ和歌山県立医科大学で、勤務医をしていました。
台風が来たとき。「停電して、ワクチンを保管する冷蔵庫の電源が止まった。ワクチンを守るためにドライアイスや氷を買いに行った」とか、「ハイブリッド車から電気を取った」とか、大変だったようです。泉南地域では、信号が長期間停電のため、道路はずっと渋滞していたようです。
という感じで、当時の経験をいろいろ聞くことができました。
私は、電車が止まっていたので、自宅から大学病院に出勤することができなくて、家でいました。タンカーが関西空港への連絡橋にぶつかるなど、大きな災害を起こしたことは知っていました。しかし、今は、私自身がクリニックを運営している状況です。
「もし今、同じことが起こったら、自分のクリニックはどうなるだろう」ということです。自分は、雇われの身分ではなく、経営者になったんだな、と。
まず、自分のクリニックは診療できるのか
災害時というと、避難所や救護所での医療を思い浮かべるかもしれません。DMATとか、各大学から派遣されるのはニュースでご存知の人もたくさんいると思います。もちろん、これも大切です。
ただ、開業医という視点では、「自分のクリニックを、できるだけ早く通常の診療体制に再開すること」を最も優先させる、とのことでした。
そのためには、「建物が安全なのか」を確認しなければなりません。浸水や破損はないか。電気や水道は使えるのか。電子カルテは動くのか。医療機器は使えるのか。
そして設備だけではありません。スタッフがクリニックまで来られるのか、という問題もあります。
道路は通れなくなっていて、車で通勤できないかもしれません。電話やインターネットが使えないかもしれません。
スタッフには家族がいます。たとえば、小さな子どもや介護が必要な家族がいれば、そちらを優先しなければならないこともあります。
このように、一つずつ考えていくと、「クリニックの建物が残っていれば診療できる」というほど単純ではないのですよね。
一つのクリニックだけでは解決できない
ほかに、話題になったのが、「地域の医療機関同士の連絡」です。
災害が起きたとき。「この医院は診療できる」「ここは停電していて診療できない」「スタッフが集まらず午後から診療する」といった情報を、どのように伝えるのか、という問題です。
各医療機関の情報を、誰が、どのようにして、伝えるとよいのでしょうか。
普段なら電話で済むのですが、大きな災害のときには、電話が使えない可能性があります。
そこで、「熊取町内の医療機関だけでも、非常時に情報を共有できる仕組みを作っておこう」という意見が出ました。
つまり、BCPは、各クリニックだけの問題ではない。医療機関同士の連携も考える必要がある、とのことなのです。
さらに、地域全体のBCPも必要
このように、いろんな意見が出ました。そして最終的に、大きく3つの方向性が見えてきました。
一つ目。災害が起こったら、まずそれぞれのクリニックが自院の状況を確認し、可能ならできるだけ早く通常診療を再開すること。
二つ目。地域の医療機関同士で状況を共有できる連絡手段を作っておくこと。
そして三つ目。医院だけではなく、熊取町とどのように連携するのか、ということ。そのために、医師だけでなくさまざまな職種の方が参加しながら、地域全体が災害時にどう動くのかを、具体的に考えていくことが大切なのです。
災害直後と1か月後では、必要な医療も変わります。なので、BCPは一度文書を作れば終わり、という単純なものではないのです。
だんじり前の街の灯りを見ながら帰りました
結論は出ませんでした。なぜなら、開業医だけでは解決せず、熊取町や多職種ともっと議論しないと進まないからです。1時間ほどの会議が終わったあとは、食事をしながら1時間半ほど参加されている先生方といろいろな話をしました。
なお、今回の会場は、貝塚市の「たから寿司」でした。個室が多いので、熊取町の集まりでは時々お世話になっています。料理もおいしくいただきました。
ちょうど今、貝塚市は、だんじり祭りを控えた時期です。3時間程度の会議の後、自宅に帰る途中、提灯の灯りが並んでいました。

災害は、いつ起こるか分かりません。だからこそ、こうした何も起きていない日常のうちに、「もし明日停電したら」「もしスタッフと連絡が取れなかったら」と具体的に考えておく必要があります。ただ、「いつ来るかわからないから、まあ、今度でいいや」とも思ってしまいがちですよね。
でも、最近の個人情報漏洩のニュースを見ていると、もしもの事態について、もっと真剣に考えないといけないかも、と思うようになりました。
ということで、今回の会議は、本当にタイムリーでした。そして、この会議をきっかけに、まずは自分のクリニックのBCPについて、もう一度きちんと考えてみたいと思いました。
