感染症の研修会に参加して、「誰に伝えるか」の難しさを考えた

10月1日、泉州地域の感染症対策に関する合同カンファレンスに参加してきました。

「2026年度 泉州感染症防止ネットワーク 合同カンファレンス」という会議です。

今回は、感染防護具の着脱の実地練習や、保健所からの連絡、薬剤師の先生による耐性菌に関するアンケート調査の報告などがありました。

内容そのものについては、正直なところ「もう少し新しい話が聞けたらよかったな」と感じる部分もありました。感染防護具の練習は以前もこの会議でやりましたし、資料も以前と同じもの。耐性菌のアンケート報告も、そこから分かることがあまりなかったので、やや残念でした。

そして、会議に参加したあと、今日の会議について、いろいろ考えていました。

同じ内容を、全員に伝える難しさ

今回の合同会議には、いろいろな施設から、さまざまな職種の人が参加します。市民病院もあれば、クリニックもあるし、母子医療センターの名前もある。

確かに、この会議が始まった頃と比べると、医師・薬剤師向け、看護師向け、介護職向け、という感じで、ある程度対象者を分けて内容が組まれるようになってはきました。

これはとても大切なことだと思いますし、ありがたいと思います。

ただ、同じ「医師・薬剤師」というグループの中であっても、感染症を専門的に勉強している人、専門外来の人、もいれば、一般外来であまり感染症とは関係のない部署で働いている人もいるはず。

つまり、同じ「医師・薬剤師」のグループでも、知識量や関心のある分野はかなり違う、と思うのです。

と、考えてみると、何百人という人に向けて、同じスライドを使って話をすることは、かなり難しいことなのだと思います。

感染症の会議に参加している施設がすごく増えた、すなわち、規模が大きくなりすぎたのだろう、と思っています。

学会でも、同じことがあります

これは学会でもよく感じています。

私が勤務医だった頃は、学会で発表する機会がたくさんありました。

それは、地域の開業医の先生に向けての発表だったり、病院の中での発表会だったり、和歌山県での発表だったり、全国学会での発表だったり、と様々です。

たとえば、一般的な小児科の学会は、「日本小児科学会学術集会」で、感染症、アレルギー、神経、循環器、腎臓など、非常に幅広いテーマが扱われます。

そのぶん、多くの小児科医に役立つ内容になりますが、一つひとつのテーマを極端に深く掘り下げるのは難しいと思うのです。なぜなら、マニアック過ぎて、誰もその発表を聞きに来ないと思うから。

一方で、私が専門にしていた腎臓病に関する学会は、扱う範囲は狭いです。尿路感染症だったり、ネフローゼ症候群だったり、尿検査だったり。

「そんな細かいところで議論できるの?」と思うような内容まで深く掘り下げられます。

どちらが良いという話ではない、と思います。

対象者が違えば、ちょうどよい情報の深さも変わる。マニアックな話を聞きたいときは、マニアックな会に参加する。マニアックな会で発表したら参加者にはウケる、ということですね。その会の内容にまったく興味のない人は、そもそもその会に来ないはず、と思うのです。

本当に届けたい人は、会議に来ているのだろうか

今回、もう一つ考えたことがあります。

こうした感染症の会議にわざわざ参加する施設や医療者は、もともと感染対策への意識が比較的高い、と思っています。

日頃から感染症を意識していて、新しい情報を得ようと思っているからこそ、会議にも参加しているのではないのかな、と。

しかし、地域の医療機関に対して、全体的に、感染に対する知識をレベルアップすることが目的ならば、むしろ普段こうした研修や集まりにあまり参加しない人に、感染症の情報を届けた方が効率が良いのかもしれません。

感染症を専門にしている人に対しては、その知識をさらに深めるマニアックな内容を話することは重要と思います。だって、わざわざ参加している人は、そもそも、もっと詳しい話を聞きたい、と思ってきているのではないのかな、と思うからです。

一方で、「そもそも感染症について、あまり意識していなかった」人には、やさしく、広く、浅く、内容を理解してもらうことも大切だと思います。ただ、問題なのは、その対象となる人は、そもそも興味がないので、こういう研修会に来ない、ということなんだろうな。

これは感染症に限らず、医療者向けの研修には、よくある難しさなのかもしれません。

「何を話すか」より、「誰に届けるか」

今回の会議、少し物足りなかったです。

そして(そのおかげというか)、研修会や発表会というものについて改めて考える機会にもなりました。

講演や研修というと、「何を話すか」に目が向きがち。

でも実際には、その前に、

「誰に聞いてもらいたいのか」

「その人たちに、どのくらいの深さまで伝えるのか」

「聞いたあと、何が少し変われば成功なのか」

を考えることのほうが大切なのかもしれないです。

患者さんに説明するときも同じ。

5歳の子どもに説明するとき。10歳の子どもに、15歳の子どもに、保護者に、医療関係者に、教授に、同僚に、先輩に、・・・といった感じで、説明する対象者が誰かを考えて、使う言葉は変わるはず。

いろんな人が集まりすぎる会では、全員に刺さる発表をするのは、たぶん無理なんだと思います。

発表する人は、対象となる人が楽しめるように、内容を組み立てれば、楽しくなると思います。ということは、会をもっとこじんまりに、小分けにしたらいいのに。なんてことを、今回の会議から帰りながら、考えていました。