デジタルか、アナログか【その1. カルテ】
こんにちは
もうすぐ学校は、夏休みが終わりますね。うちの小学生のこどもたち、学校の宿題、まだやっています。いや、まだやっていない・・・早く終わらせたらいいのに、、、ということで、最近はこどものやる気を出させるのに大変です。
昼のニュースで、「どこも人通りが減っています」ってやってました。・・・みんな宿題やってないんちゃうのって思ってしまった!(ニュース解説では、緊急事態宣言のためらしいけれど・・・)
デジタルか、アナログか
個人的に、ずーっと悩むテーマ。それが「デジタルとアナログとどちらがいいか」問題。
でかすぎるテーマなので、少し中身を限定します。
今回は、・・・・・・「きみに決めた!」(ポケモン風に)
「カルテ」に限定したいと思います!
まず、カルテって・・・?
カルテって、病院で、お医者さんたちがなにか記録しているもののこと。紙に書いてたり、コンピュータに打ち込んでたり、そんな風景、見たことあるはず。
今だと、電子カルテが多いかなあ?でも、わたしが医療の世界で働き始めたときは、まだ紙カルテでした。
実は、紙も電子も、両方経験している
紙カルテが「アナログ」だとしたら、電子カルテが「デジタル」ですよね。医学生の後半、病院で実習するのですけれど、その頃、大学病院は紙カルテだったと思います。
それから、医師になって、働きはじめた時も、紙カルテだった。でも、病院の移転がすぐにあって、新しい病院では電子カルテになりました。
その後、いろいろ転勤して、いくつもの病院で働いたけれど、紙カルテもあるし、電子カルテもある感じ。
今でも紙カルテはあります。休日診療所とかそうですね。
で、どっちがいいのかというと、
うーん、結論は、「どっちもどっち」かなあ。いや、デジタル(電子カルテ)のほうが少しいいかなあ?
電子カルテもカンペキじゃないんですよね。ということで、少し、比較してみました。
電子カルテ
- 誰でも読める字(走り書きムリ)
- 絵を入力できない
- ショートカットは、「コピー・ペースト」
- 紙が少し減る(保管場所にあまり困らない)
- コンピュータがあればどこでもOK
- キーボード入力が苦手だと苦労する
- 電子カルテのメーカーによって操作が変わる
- 便利な機能を使いこなせるかは、自分しだい
- 過去の記録へのアクセスは(・・・)
紙カルテ
- 走り書きできる(読めない字になる)
- 絵も書ける
- ショーットカットは、「インクのはんこ」
- 紙が溜まっていく(保管場所が大変)
- 原本1つしか存在しない
- キーボード苦手でもOK
- だいたいどこの病院でも紙は紙。
- 便利機能はない。いい意味でどこでも同じ
- 過去の記録へのアクセスは(・・・)
「カルテ」につっこんでいきます
カルテに思うこと。以下、見出しの数字は、上の「1-9」に対応しています。
- たとえば、インフルエンザが大流行していたときの休日診療所。紙カルテだとボールペンで “ばばばっ” て書いて終わらせることが可能!すなわち、短時間で多くの患者さんをみることができる!これが、電子カルテだとなかなか手ごわい・・・立ちはだかる大きな山は「漢字の変換ミス」。たとえば「受診」が「受信」になってしまう。ほか、薬の名前を無理に漢字変換しようとしてわけ分からないところで変換されてしまい、できあがったのはよく分からない文字列(← でも、何を変換しようとして間違えたのか分かってしまう笑 )・・・電子カルテでは、この「変換ミス」が大量に勃発してしまう。。。じゃ、紙カルテがいいのかというと、そうでもなくて。たとえば、紙カルテだと、前回受診時のカルテ記事(違う先生の記録)を見ようとしたら、まず解読するところから始まることもしばしば・・・(達筆すぎて読めない・・・)うーん、コンピュータの「変換ミス」、なんとかならんのかなあ・・・頭で想像している漢字をそのまま吐き出してほしいって、いつも思う。。。
- 紙だと、「口の中のここが赤くて」とか「体のここに発疹があって」とか記録に残すのが簡単!絵を書いて赤えんぴつで色塗ったら完了。ところが、これを電子カルテで再現するのはとっても大変・・・まず、マウスで曲線を書こうとしても、ふにゃふにゃの変な線になっちゃうし、色を塗るのも細かな融通がきかない・・・絵で記録を残せるってのは、あとから見てすぐわかるし、今すぐ記録も簡単に残せるし。これは、紙カルテの圧勝じゃないかなって思う。
- 大量に同じ処理をこなすとき。たとえば、薬の処方箋を書く作業。「カロナール細粒 100 mg 頓服(発熱・疼痛時)1日3回まで。6時間あけて使用可能。3回分」とか、毎回字を書くのはチョー大変!・・・で、これは、電子カルテでコピー & ペーストが楽ですねー。紙カルテだと、専用のはんこをよく使います。ゴム印とか。黒インクにつけて押しまくります。
- 5. 紙カルテは、原本1つしかないんです。当然です。なので、病院で救急外来にいるときとか、「救急車入ります!循環器科の○○先生かかりつけの●●さんです」って言われても、循環器科じゃない救急科の先生にとっては、その患者さんが誰かわからない・・・紙カルテだと、カルテが保管されている倉庫から、そのカルテを探し出して、救急外来に届くよりも先に、救急車が到着してしまうことも・・・ときどき、そのカルテを貸し出して別の場所にあるときとか、「カルテはどこだー!」ってなってしまうこともあり得るわけで・・・これを思うと、電子カルテはいいですねー。ID番号とかで検索して、どういう患者さんでどういう薬を使っていて、どんな検査結果で、とか、すぐに分かる。ほかにも電子カルテのほうが良いときがある。たとえば、病院の外来を担当しているときに、病棟から「先生、入院中の●●さんの薬、オーダーしてください」って言われるとき。これも電子カルテだと、外来に置いてあるコンピュータからすぐにオーダーできちゃう。紙カルテだったら、外来を離れて病棟に行って、病棟の紙カルテに記録しないといけないから、色々大変・・・
- 電子カルテを快適に活用するには、正確なキーボード入力が求められる!医学用語は、普段使わないような漢字がたくさん出てくるので、すぐに変換キー(シフトキー)を押して決定(ENTER)を押しちゃうとひどい目にあうことがしばしば・・・IMEとかの変換ソフトに対して「ちょっとは学習しろー!」ってコンピュータにブツブツ文句を言うことは非常によくある光景。どうして、コンピュータは「受診」を「受信」にしたがるんだろうか・・・電波を受信してるわけないじゃないかー!
- それから、電子カルテは、大手だと富士通とかNECとか、作っている会社がたくさん!なので、病院によって、入っている電子カルテメーカーが違うのは普通のこと。「一度覚えてしまうと大丈夫でしょ?」って、そうなんだけど、たとえば、週1回しか行かない病院の電子カルテとか、3か月に1回3時間しか出張で行く機会がない病院の電子カルテとか、ぜんぶ覚えるのはたいへん。若くてコンピュータに詳しい先生ならともかく、コンピュータとは距離を置いておられる先生だと、操作を理解・維持しておくことはムリだと思われる。
- ということで、電子カルテのメリットを活かせるかどうかは、コンピュータの性能というより、操る側の能力次第と感じている。メーカーが「ここはこう使うと便利ですよー」って宣伝してくれて、「おお、便利な機能だねー」って思っても、いざ自分で使おうとしたら「あの機能、どうやって使うんだったっけ?」ってなるのは日常茶飯事。むしろ、こちらが電子カルテの機能を使いこなしてきて、メーカー側に「すいません、この場面で、さらにこうしたいんですけれど、その機能、ないんですか?」とか聞けるようになるくらい自分がレベルアップできてきたら、使いこなせてきているわけで、そうなったら「電子カルテ無双」できるかもしれない。
- 最後に、検索機能について。これ、電子カルテのほうが圧勝!って思いませんか?・・・でもこれがねー。。。電子カルテ、なかなか融通きかないんですよ・・・検索するからには「きちんと入力」しておくことが必須なわけですけれど、ついよく分からない変換文字で記録されていることもあるわけで。まちがっていたら、検索されないんです・・・はい、当然です・・・そして、もう一つ。電子カルテで検索すると「検索ワードが見つかりすぎる」という問題もよくある。「いや、検索に時間かかりすぎでしょ!?何百件も見つかっても使えないし!」ってことは、よくあります。かといって、紙カルテだったら、何ページもある紙をめくって探していくことになり、その作業も非常に大変!・・・電子カルテと違って「見つからない」「見落とし」に面してしまう。。。。検索機能は、「今後、どのように検索するだろうか」を考えた上で、決まったキーワードを埋め込んでいくようにしておくこと!これが、電子カルテで検索を有効に使えるようにする方法、だろうなあ。・・・でも、それに気づくのは、検索したい時で「時既に遅し」なわけなんです。
デジタルとアナログは、一方だけでは成り立たないね
ということで、「カルテ」について、個人的に「デジタル vs アナログ」を検討してみました・・・うーん、今回の記事をキーボードで入力しながら、不満に思っていることがどれほどでてきたことか・・・溢れ出してくる!
まあ、100% 満足できるものって、なかなかないですねー。
今度、病院を受診される時、先生がカルテをどう処理しているのか、一度観察してみてください。「ずーっとコンピュータばっかり見てるなあ」ってときは、そのコンピュータに慣れていない先生かもしれません。「ずーっと紙カルテをめくってるなあ」ってときは、探しているものを探せなくて苦労しているときかもしれません。